陰影はしばしば創造を表すものとして例えられます。切り紙(ペーパー・カット)の美しさは、つくりだされる異次元の陰影の美しさにもあります。今回何人かの切り絵作家たちにデザインを委託するにあたり、これまでの創作活動や幼年時代に影響を受けたシンボルを盛り込んだデザインを依頼しました。
この柄はスー・ブラックウェルが19世紀初期の『英国野花図鑑』の中で見つけたあるイラストを切り抜いたことから生まれたものです。
子どもの頃英国で休暇を過ごしていたスーはいつも「アイ・スパイ」という物当てクイズの本に夢中になっていました。「自然の中にあるのはどれでしょう?」や「田舎にあるものはどれでしょう?」、「野の花はどれでしょう?」と書かれた質問の横の挿絵に正解のチェック印を入れるのが何よりの楽しみでした。この幼少時代の思い出をヒントにしたワイルド・フラワーズには、彼女のとどまることのない情熱が表れています
英国の田園風景にみられる動植物や建物を題材に、紙の彫刻を創り出すヘレン・マッスルホワイトが、紙を切って、丸めて、折って、切り込みを入れ、重ねて色付けした作品がウィンドラッシュです。
職人技とウィリアム・モリスの精神(エートス)を大切にしてきたヘレンにとって、ケルムスコット・マナーがあり、さらに彼女が幼少時代を過ごしたオックスフォードシャー州のウィンドラッシュ・バレーの植物を題材にしたデザインを創り上げることは、彼女の幼少時代と現在の彼女の作品の両方を象徴するものになりました。
世界の現代紙幣を使って紙の彫刻を手掛けるジャスティン・スミスが植物を題材に創作した柄で、彼女のスタイルが脈打っています。ジャスティンがスタジオに通う途中で目にしていた壁が徐々にツタに覆われていく光景をヒントに生まれたデザインです。
ジャスティの彫刻の多くには昆虫が登場することから、今回ツタの葉にてんとう虫が描き加えられました。
エレノア・ドリーン・スミスによって手描きされた柄で、トレスコ島にある彼女が家族と過ごす家を題材としています。エレノアは、日本の琳派の美学や、彼女のファッション・ブランド「パルティミ」のプリントに使われている自然を題材にした象徴的モチーフなどからヒントを得ています。「ワイルド・ペリニアル」はトレスコ島北端にみられる独特の「波」のようなギョリュウモドキ(ヘザー)をシンプルに描いたグラフィック描画です。
#01 ペーパーシャドーズ
#02 マウント・スチュアートとビュレル・コレクション
#03 大気圏
#04 世界を変えた植物
#05 象徴的意味を持つ草花
#06 クラシカル