柄そのものとはまた別に、それぞれの柄への配色にもリバティのストーリーがあります。こちらでは2010年秋冬柄のカラーストーリーをご紹介いたします。
東京の江戸東京博物館の浮世絵や1930年代の版画に着目。日本の歴史の中でも、江戸時代は最も平和な時代であり、コレクションにはそんな穏やかで優しい色合いが集められました。
抑えたピンクと淡い紫に、版画に見られるくすんだグレーやグリーンを加えたパレット、また最も淡い色合いや薄紅色(ダマスク)は、美術におけるまさに優しい「浮世」の色彩です。日本では淡いピンク色はどの色ともよく合う色と考えられており、また恋愛を表す「変化の色」であると信じられています。
緑の植物は日本庭園にはなくてはならない要素です。水に映し出されたものの深みのあるダークな色彩に、松や柳やハスの葉、緑のもみじ、苔などの暖かみのある緑を加えたパレットは、すべて日本で撮影した公園やお寺、御所の庭などの写真からヒントを得ています。
より豊かでダークなパレットは、グリーン系の濃淡の宝石やヒスイ、それに活力と結びついて古くから尊ばれてきた松の淡黄色や、しなやかに伸びる野生の竹などの色が盛り込まれています。自然の普遍性の象徴である緑。その色調の異なる緑を賞賛する、やや霞んだ同系の中間色のパレットです。
東京で撮影された都会の風景、日本の織物、砂や葉から着想を得ています。
都会、砂、葉の影などの色相のグラファイト的な同系の中間色やオフ・ホワイトのパレットでありながら、室町や戦国時代の絵画やデッサンの原理や陰影技法に基づいたものになっています。日本の歴史の中で「戦国時代」と呼ばれたこの時代には、激動する社会の中で、政治的陰謀が渦巻き、軍事的対立が絶えませんでした。
日本では白は自然界の雪や霜や霧を象徴します。色のスペクトルの中の何色にでも染まる白は、その見ための純粋さからも、多くの特別の儀式に使われます。スペクトルの正反対にある黒は、暗黒を表しますが、同時に宇宙の色の全てを包含するとされています。この究極のパレットには、ランプや漆器の黒をバック背景色に、ダーク・ティーやダーク・スレートからとった色相のパール・グレーやスノー・ホワイト、チャコール・グレーやブラウンを挿し色として組み合わせます。
洗練された同系の中間色のパレットは、劇的でありながら優しく、降りゆく雪の要素を盛り込んだ真冬のパレットです。
上野公園にある東京国立博物館にあった着物から着想を得ています。
日本では幸せと幸運の表現であるとされている紫と青との豊かな色の組み合わせです。深みのあるロイヤル・パープルは、昔は最も地位の高い人の着物にしか使われず、紫は皇室の色とされていました。人は常日頃青に囲まれて生活をし、青空のもとで暮らしていることから、日本の色相の中で青は重要な色となっています。
日本には「愉快」という言葉があり、これはとても幸せでくつろいだ状態を表しますが、これには赤や青を一緒に使い、他の色と対比させることで際立たせ、柄が目に飛び込んでくるように強調して表現されます。
このパレットは、これまで登場してきたものの全てに敬意を表した、豊かで高貴、そしてまた心地よい、くつろいだ色彩です。